ココロの森

明星

神殿の向こうに陽が沈み

今日もまた一日が終わる




茜色の上気した空に

女神がそっとくちづけると

空はたちまち顔色を変え

青く輝く帳をおろす




女神と月のランデヴー

時として近づいても　

時として重なっても

ほんの束の間の逢瀬




夢のひと時は　星の瞬き

永遠とも思える彼方から

遥かな時を超えて来る光も

今　このほんの一瞬のきらめき






おろした帳の向こう側で誘う貴方

行けない　いけない　これ以上は

私は神殿（ここ）から出られない

私が神殿（ここ）から出られるときは

貴方と繋がる　あのひとときだけ

翼を持てる　あのひとときだけ






でも私は　もういけない

私はもう　生きられない










哀しく笑う私

諦めて笑う貴方


お互いに気付かなかったけれど

なにもかも　諦めていたのね

ふたりは









背中をあずけた白い柱が

やがて赤く染まってゆき

間もなく私は　

こころと身体を　引き裂かれる




宵の明星を見上げた貴方に

冷たい報せが届くころ

帳の向こうに　私は旅立つ

いつでも貴方に　出会える場所に




やっと貴方と　自由に逢える

ずっと貴方の　側にいられる



いま私は　しあわせよ